第5章 赤い腕章
「これは……!」
己の命の危機を悟り慌てて立とうとするも、また足が動かずその場に倒れた。
"急性冷体温症"
しかも、こんなに前触れもなく、速い進行と強い症状は今までなかった。
パキパキと音を立てて凍っていく足元は目に見えて急速に霜を帯び白く変色していく。
まだ死にたくない一心で、どうにか立ち上がろうと苦戦していると、急に視界が上昇した。
「何をしている!?急がねばならんのだろ!!」
という声にハッと我に返った時にはもう、ミホーク様は私を横抱きに抱えて、屋敷の方へ走り出してた。
「ミホーク様!!なりません!
あなた様まで凍ってしまいます!!」
ふと、思い出したのは以前倒れた時、再生の能力を持つマルコの背を凍らせようとしたこと。
離れようとしたけど、力の差がありすぎてビクともしない。
足の方を抱えている彼の腕は既に凍り始めている。
それも当然。
ミホーク様はわたしの知るところでは能力者じゃない。
火をおこす能力も再生する能力も、発熱させる能力もない。
「覇気で俺自身が凍るのは止められている。己の身を案じろ!
対処法を言え!」
怒ってる様子じゃない。
その瞳はわたしがどうかなってしまうことを恐れているような焦燥したように見えて
刺さる視線にどくりと胸が鳴る
「速く言え!!」
どうしてそんな表情をなさるのです?
そういいそうになったところをグッと堪えて、最終手段を提示した。
「燃えるものがないところ、あるいは、燃えても構わない場所にわたしを放置して遠く離れてくださいください。」
「何をするつもりだ!」
「今の、ご覧になったでしょ?わたしは心臓すら生きてたら回復するのです。もとの姿に。
もう手も凍り始めています。わたしを生かそうとしてくださるのなら、その様にしてください。」
安心させるように落ち着いた声で自分の身が安全であることを伝えると
「…………わかった。」
と言って、走る方向を変えて走り出した。咲が並走して乗せてくれた時、懐から火竜の式紙を取り出した。