第5章 赤い腕章
「?!!!」
一瞬訳がわからなくて頭が真っ白になった。
ザシュッ!!ザン!!!
「ぐっ!!」
秒に数回と驚異的な速さの斬り合いで、いきなり足が動かなくなったという状況に気づいた時には黒刀から2回もの攻撃を右は肩から胸、左は脇腹から腹にかけて受けてた。
「ユリ!!」
ミホーク様の声で、自分の最悪の状況を悟った。
傷を見られると思っても止めることは叶わず、じわじわと翡翠色の光が傷を縫うように走り出す。
当然駆けつけてきたミホーク様は驚いて走る足を止めて身を引いた。
彼の驚愕の眼差しを目の当たりにして、警戒心から睨み付けた。
「くっ……。」
これまでも切り傷擦り傷はいっぱいつくってきた。
でも、どうにか誤魔化してきてたの。
だけど、もうこれは隠しようもない。
光を帯びて治っていく傷口はもうすっかり閉じ淡い光と出血した血だけが皮膚の上にある状態。
悪魔の実の力ではないこの治癒の力は、白髭海賊団、赤髪海賊団の一部、そして家族だけの秘密として政府の耳に入らないように気を付けてきたもの。
この人は七武海の中で気まぐれと言われながらもきちんと役割を果たす真面目な人。
一番見られたくないものを見せてしまった。
「政府に……ハァ……ハァ…海軍に…報告しますか?この事を……ハァ…ハァ……。
わたしは怪我してもすぐに治るし、………傷を負った他者を……ッハァ…この力で治せるような化け物です。」
自己防衛の反応で咄嗟に傷があった肩を抑え、ミホーク様を警戒した。
心臓が煩い。
ジッと無表情でこちらを見ているこの1秒1秒がかなり長く感じた。
そしてミホーク様は一度目を閉じて一呼吸おいてわたしの目を見る。
「奴らに報告する道理がない。
俺は七武海として武力は提供しても情報は渡さん。
それよりなぜ倒れた。」
「……!!」
傷口に現れる治癒の能力を隠すことばかり考えてた。
足に触れる瞬間ピキピキと嫌な音を立てた。
同時に驚くほどに冷えきった足に自分が置かれている状況を今度こそ正確に理解する。