第5章 赤い腕章
その言葉は強くユリの心を打つ
電流がながれるように力が漲るのがこんなに心地よいものだったのだろうか。
自ずと刀を持つ両手に力が入る。
自身やシャンクス、ビスタと同じ剣士とは異なる
仲間を持たない孤高の海賊としての
生き方
戦い方
自由
冒険
それら全て、シャンクスが彼を生涯のライバルとして、今は一人の友人のように誇らしげに語る姿を幼い頃に見てきた。
その話と相まって、新聞で騒がれる彼の起こした事件や噂の数々が興味や関心をもたらせ、いつかは教えを乞いたいと思っていた人にここまで言ってもらえたのが嬉しくて仕方がない。
「有難き幸せにございます!!」
喜びに一瞬緩んだ口元と気を再度引き締める。
ミホーク様は笑みを出す余力がなくなっただけ。
まだ、シャンクスとやり合うならこんなものじゃない。
”少し本気になった”その程度の変化だと思う。
でも、少しだけその姿勢を変えることが出来た自分に自信が持てた。
”出来る事ならば、一太刀隙をついてみたい。”
そう目標を見定めて再び剣を振るい出した。
初めて剣を交わした時、
今の話を聞いた上で恐らく、妖力を抑えて俺と剣を交わしていたのだろう。
大胆不敵な白菊の剣を彷彿とさせるものだった彼女の太刀筋に、個性の部分の繊細、スピード、的確、正確性が
垣間見れていた。
その礎となる深い部分で赤髪と同じようなものを感じた。
恐らく同じ者から習ったのだろう。
基礎が完璧で世界が認める技量があったからこそ、敢えてヒヒと戦うことはさせず、俺自身と戦う形で稽古をさせた。
流石に、休む日も設けずひたすら全力で立ち向かってきたユリに疲れが見えてきたと思ってた矢先。
突然見せられたこの妖力を伴う攻撃は
それでも力や威力はまだまだ白菊には及ばないものの、
放つオーラと豪快さ、
その剣を振るう姿勢は白菊そのものを思わせるに充分なものだった。