第5章 赤い腕章
今日は気分が軽い。
そして、何かの箍が外れたかのような身軽さを感じていた。
それに加え明日で最後の修行となることもあって、集中力が格段に上がっている状態。
その分自分の思うようにからだが動いて、剣の衝突音、衝撃もいつもより重い。
時より飛んでくる斬撃を受け流し、前進して斬り込む。
それを阻まれてはもうひとつの剣で斬りかかり
剣先に重力を移動させ飛び上がる。それすらもいつもより身軽に感じていた。
そして、振りかぶってこちらも氷を纏った斬撃で応酬する。
こちらも軽い。
ギュゥウウン!!ドゴォォォオオン!!
当然いつもと比べて威力が上がったようにも思えた。
またわたしは力が覚醒したのだろうか。
ミホーク様の反応も、時々驚きの表情を浮かべることがある。
昨日とはまたなんだか違うような違和感に何か起きそうな違和感も、妖力を引き出せる出力が上がったのではないかと言う喜びもあって、半信半疑状態。
ただ、体にかかる負担が少なく感じているという今の状態のメリットの方に注目して実戦に挑んでいた。
「どうした。やけに調子が良いじゃないか。」
「えぇ。また魂の力の覚醒でしょうか。」
打ち付けた剣がギシギシと軋み、時より火花が散る。
「明日で修行は終わる。
お前が実戦で戦う時のように短時間で俺を仕留めるつもりで掛かれ。」
「はい。」
掛かっていた衝突の力を流すようにして体を翻し、再び飛び上がる。
雪妖流桜の覇気を纏い周囲の空気がビシビシと音を立てて凍る。
水弧を口に加え氷傀を突き刺すように構えて刃先に意識を集中させ斬りかかる。
バギンと轟音を立てて水弧と黒刀が衝突すると覇気を伴った爆風のような空振が周囲に広がり草木の表面が薄く凍りついて固まった。
覇気を伴った剣は鉄の軋む音とは別物の
雷のような音を立てる気迫のぶつかり合いが
周囲の空気の色を赤黒く変える
ユリの最大出力の際の表情は雪女の凍りつくような妖変したもの。
だが、今日のそれは本人が意図しないところで今まで以上の妖変していた。