第5章 赤い腕章
「例の海賊は幹部逃走とあったな。」
修行できるようなところまでは徒歩。
普段はわたしがあれこれ話を聞いては答えるだけだったから、その話は気にかけてくれての事だったんだろうか。
「はい。記事には事実と違うところはないようです。」
「そうか。壊滅はしていないのならば気を抜かない方がいいだろう。
故郷に戻るか、あるいは、商船に負けたという鬱憤ばらしに潰しやすい海に入るか。
奴らの動向は観察する必要がある。」
「そうですね。襲えるものは手当たり次第。度重なる仲間割れ。噂でしか存じませんが、本当にロックスのようです。」
「いや、ガープとロジャーがロックスを壊滅させた頃、俺も幼く記憶があいまいだが、もっと惨く、凶暴な奴らだったという印象だ。
例の海賊団はアリの大群のような構成人数が、島潰しを数々成し遂げている状態だ。
常に先陣をきるのは末端の構成員で船長コーサ・ノストラとその幹部は序盤は司令塔の役割を果たすと聞いている。」
今のミホーク様でもそんな幼少期の事を覚えてるくらいなんだ。
父様にもロジャーとの冒険のはなしは幾度となく聞いたし、おでん様からも聞かされてた記憶がある。
「もし、また大勢の船を引き連れて対峙した場合、島に被害なく彼らを全滅させるのなら…」
「一人では限界があるだろう。島を取り囲まれては己の目の届かぬところに被害が及ぶ。
沖合いで作戦にはいる前にいち早く見つけ出し攻撃をしかけるか、誰かと組むか。
組むならばユリの直属の部下か、広い範囲の攻撃を可能とするものが運良くいるか。
人選は大事だろう。
種によるが、蟻とて大群になれば人を殺すことがあるように、弱かろうと数が多ければ戦術が必要だ。
守るものがあるのならな。」
「誰かを守ろうとしたことがおありで?」
「………」
ミホーク様がチラリとわたしを見た。
恐らく聞くなってことだろう。
「ごめんなさい。要らぬ質問をしました………
心しておきます。」
デリカシーないのかな?わたし。
頭で疑問に思ったことがとっさに出た。
でも、ずっと一人でいらっしゃるのだ。
究極に人が嫌いなら理解できる。
でも、そうでもないこの人なら
そういうことが過去にあってもおかしくはない。