第5章 赤い腕章
戦闘、敵地においてユリは敵に入り込ませる隙は絶体に作らない。
冷静で、時に冷酷になる強い女。
それは稽古をつけている間もそう。
人とは呼べない冷徹で冷酷な顔つきに変化し、容易に追えない速さで立ち回る。
だが、いざ一歩外に出て敵対しない相手の前では、
赤髪が言うようによく笑うし、聞き上手で感受性が強い。
多少うっかりしていることもあるが、自分より周りを大事にし、相手を立てることに長けている。
実際に今までの会話で"周りがいてこその自分だ"という趣旨の言葉をよく聞いた。
赤髪が言ってたな。
アイツの周りに強い人間が集まる理由がいづれ解ると。
実際に、自分より歳上の人間が多い世界でも、多くの人間が彼女を支えるからこその高い地位を得たのだ。
実際にディルバリーでも、白髭の船でも、赤髪の船でもユリより若い幹部など存在しない。
この俺でさえ、自ら剣を教えたいという気持ちにさせられた。
実際剣を交える事に毎回付き合うのも苦にならず、
それどころか目に見える成長が楽しみで仕方なかったほど。
本当に良い意味でとんでもない女だ
人生の中で一番と言って良いほど濃すぎて穏やかな1ヶ月がもう終わろうとしている。
ユリは商戦護衛で世界中を飛び回るのであれば
ここを発ってしまえば、大きな戦争でもない限りユリとは会わないかもしれない。
残されたわずかな時間。
俺はユリに何を教え、何を残してあげられるだろうか。