第5章 赤い腕章
心の地盤を固めるように
深く言葉の雨を降らせていく。
そして、自然と心のそこから勇気が湧くの。
ミホーク様はその鷹の目のような千里眼からか、はたまた世界一と言わしめる道を歩まれたからか、
人の心を感じとる力がわたしのような瞳を見て人を知るって次元じゃない。
人の立ち振舞い、太刀筋、動作や仕草などその人が発する全てものからいろんな情報を得る力を持っている。
到底わたしが死ぬまでに、ここの境地に立てる日は来ない。
そして、返ってくる言葉も的確で、ここにきて1ヶ月で何度彼から勇気をもらったことか。
海岸へ行くと言ったからか、咲はゆっくりと下降し砂浜へ降り立った。
湿気が多い高温多湿のここでは、本当に海が燃えてるかのような蜃気楼が揺らめく。
火は心を浄化するって言うけど、実際見ているのは空と海なのに、心に心地よい風を感じるかのようだ。
「有難うございます。
先ほどまでの下らない思いが洗い流されるようです。
凄く綺麗……。」
波打ち際まで歩いて身を乗り出すようにして見ている内に心の中にあった不安や情けなさからきていた焦りの感情は景色と波の音に浄化されていた。
言葉も発することなくただユリの背を見ていたミホーク。
千里眼の瞳が常に纏っていた弱さを見せぬ鉄壁な鎧は今、このときだけ外されていたのをユリは、知るよしもなかった。