第5章 赤い腕章
部屋について汗を流しても気は晴れない。
それに飛び込みで修行にきただけあって、何にもない部屋。
ミホーク様と顔を合わせるのは、修業の時と食事の時だけ。
それ以外は大抵部屋か畑で過ごしてた。
ぐるぐると頭を過るのは、エデルたちディルバリーの心配と、それで昨晩良く眠れなかったことで、師であるミホーク様に休めと言わせてしまったこと。
それがたまらなく悔しかった。
「自分を大切にしろ……………か……。」
気分を入れ換えようと瞑想しても雑念だらけで身が入らず、部屋の中を行ったり来たり。
紙にペンを走らせ思ってること全部書き出しても、どこか悶々として落ち着かない。
しまいには大の字になってベッドに倒れ込み高い天井を仰いだ。
「ハァ。」
窓から入ってきた咲がわたしを慰めるように頬に頭を擦り付ける。
「まだ、自分自身を上手くコントロールしきれてないのね。わたし。
人に心配させないようにするにも、自分を大切にって言われたのにね。」
そう呟きながら、どうにも出来ない情けなさで一筋の涙が流れた。
気づけばいつの間にかそのまま寝てて、目覚めたのは今まで3週間一度もなったことのない戸を叩く音。
慌てて起きてドアにかけ寄りドアを開けると、修行は終わったのに黒刀を背にした見慣れた装い。
「どうしたのです?」
「フッ。寝てたようだな。」
その言葉を聞いて慌てて顔を隠すももう遅い。
泣いたしひどい顔になってるのを見られたと、恥ずかしくて一気に耳まで赤くなった。
「化粧を直して咲と来い。出掛けるぞ。」
そう言いながら、いつも大きな黒刀を持つ大きな手がわたしの頭に乗せられた。
どうしてだろう。
性格とか全く正反対のはずなのに
シャンクスと同じような暖かさを感じた。