第5章 赤い腕章
屋敷を出てくるときにいつもの戦闘服を着て出た。
ミホーク様も着替えていらしたようで、黒刀が背中で怪しい光を放っている。
彼は「どうだったか」なんて聞かない。
わたしが出てきたこの姿と表情が答え。
「お待たせしてしまいました。今日もよろしくお願いします。」
「始めるぞ。」
「はい!」
ユリに背を向けて先を歩くミホークは確かに、彼女の晴れた表情を読み取っていて
己の言ったことを理解したようだと穏やかな表情を浮かべていた。
その後の実践でも、開き直ったユリの剣は迷いなく鮮やかなものとなったのは言うまでもない。
一方
ディルバリーカンパニー
西の海では、被害にあった島でディルバリーの社員が復興支援したり、海軍以上の人道支援に取りかかっていた。
生き残った若い島民は、皆、ディルバリーの新入社員として迎えられることになり、ボルの妻で取締役補佐のエリが本部に二人召喚した。
<本部、社長室>
「社長。エデルです。」
「来たか。入りなさい。」
戸を開けて社長室に入り、促されるままエデルはボスの前に座った。
「ユリはなんと言っていた?」
「信じて私に一任すると。どうやら、また修行しているようです。
休ませた意味がありませんが彼女らしいと言えばそうでしょう。」
立ち上がって自ら茶を立てるボルはエデルの報告を受ける。
二人分の紅茶を置いて飲むように促すとボルは語った。
「そうか。ユリには歳に似合わず大きなものを背負わせ過ぎてはいないかと心配していたが、
どうやら、人を信じて任せるということを学んだようだな。」
「あの頑なになってたユリを説き伏せた師とやらはどこの誰だか。」
「彼女は、強い者を引き付ける。
ユリ以上の戦闘力を持つものとなれば、教えてやれる人間の数が限りなく狭まる。
しかし、あの子はもう自分のやったことの責任は取れる子だ。
用心深くもなったろうし、男所帯で育ったんだ。
そう心配はしてやるな。」
「え?」
「親同然に君の面倒を見てきたんだ。表情ひとつで気持ちはわかってしまうよ。エデル。」