第5章 赤い腕章
二人はそれぞれヒヒに教えながら、畑を耕し夏野菜の種まき、ベリーなどの果実を収穫をしていく。
ユリの方は子供のヒヒに囲まれたり、纏わりついて、それを上手く交わしながら作業したり、時には楽しそうな笑い声をあげている。
その様子を微笑ましく見守りつつ、その周りを和やかにし心を引き付けるユリの才覚にただただ感心するミホーク。
穏やかな朝は、これから激しい戦闘の修行をする前とは思えないほどだった。
日もかなり上ってきて島特有の蒸し暑さが強くなる。
畑の作業は終わり、ユリが握ったおにぎりを昼食に、ニュースクーから新聞を受けとった。
この時間は大抵号外。
一面には大きな見出しで
【コーサノストラ海賊団西の海(ウェストブルー)の島、海軍基地を侵略。犠牲者多数出し、グランドラインへ】
とある。
不幸中の幸いでディルバリーの支店はそこにはないものの近郊の島である以上気になるところ。
「少しお時間よろしいでしょうか。社長に連絡しないといけません。」
「あぁ。こういうのはお前の管轄だろう。行ってこい」
同じ記事を読んでいたミホーク様はこちらの事情をも理解してくれるようだった。
「有難うございます。」
そう言って屋敷に戻った。
部屋について電伝虫の受話器を握った。
「ボルさん。新聞読みました。西の海支社への影響は今どういう状況なのですか?」
『仕事の事を気にせず休みなさいと言ったはずだぞ?それにユリのお陰で護衛官の力がついてきたんだ。
エデルが教えたにしろ、そのエデルに教えたのも君だったろう。』
「そうですが、状況だけでも聞かせてください。」
『グランドライン前半にミゼルを行かせた。あっちにもユリの影響でめきめきと力はつけているし、戦略を練れる。
何も気にすることはない。
我が社に被害は出ていないよ。安心しなさい』
落ち着いた声で話をしてくれるボルさんの話し方からそれが事実であることを確信した。
『部下を信じて任せることも、部下を育てていくことになる。
エデルも、他の護衛官も君が育てた部下だ。
エデルが今指揮を執っている。上手くやってくれているよ。』