第5章 赤い腕章
その日の夜に、ヒヒに田畑を共に耕すことを相談すると、
ミホーク様は呆気にとられて、また面白いことを考えるものだと笑っていた。
翌日、笛を吹き終え、畑のもので朝食を作り一緒に食べた後、いつもの白衣姿ではなくTシャツと無地のジャージで外に出た。
ミホーク様は農具を持ってくるらしく畑で待ってると、後ろからボスっと帽子を被せられて驚いて振り向いた。
ごめんなさい。
いつもの威厳はどこへ?
表情に出てしまったみたいで、
「どうした。何がおかしい。」
と怪訝な顔で仰った。
「いえ、ちょっと麦わら帽子で出ていらっしゃると思わなくて…。」
麦わら帽子を被り首にタオルをかけた姿で、シャベルや鍬をもっているのが、どうも馴染みがなくて笑いそうになってしまった。
えぇ。いいんですけどね?
ただ頭の中が、いつものお姿からイメージが追い付かなくて
「被り直してくる」
といって、くるりと来た道を帰ろうとする。
それを見て慌てて
「え?!
いやいや、それはそれで農作業って感じしなくなっちゃいますから!
ごめんなさい!」
と、腕を引っ張りながら引き留めた。
振り向いたミホーク様の表情は少し飽きれ顔。
「でも、いつもより緩い感じで、それはそれで素敵ですよ。」
「…………………」
ぐにぃ
「い″っ!」
い、今、
思いきり鼻摘ままれましたけど?!
「始めるぞ!」
といってズンズンと荒い早歩きで先に歩き始めた。
え、嘘…………
シャンクスとかマルコと同じ反応。
もうユリの中の、出会う前までのミホークのイメージは、
たった数日で半分以上は覆されていっていた。