第5章 赤い腕章
図星か…
ユリの体を起こしてやると、言葉を継ぎ足した
「その胸にあしらわれたモノは単なる飾りではないだろう。
もっと周りに頼れ。自分を大事にしろ。
かえってお前の大事な奴らに心配をかけることになるぞ。」
ユリは両手で顔を覆い肩を震わせ泣いた。
「今までよく折れずに走ってきたな。
頼ることと、責任転嫁は別物だ。
俺が言うのもだが、
頼ることは強くなることにも、周りを信頼することにも直結する。
もっと周りを頼り、自由に生きろ。
生き急ぐな。もっと自分を大事にしろ。」
「………………はい。本当に……おっしゃる通りですね。
有難うございます。」
「もう日暮れだ。屋敷へ戻るぞ。」
「はい。」
俺が差し出した手に遠慮することなく手を伸ばした。
しっかり握り返して立たせる。
「そうやって差し出されたものは遠慮するな。」
まだ赤く充血した目でヒクヒク言いながら、腕を引かれている姿はまだ年相応の女。
「明日はこの黒刀を受けてみよ。
言っておくが、敵でない女相手に傷を負わせるのは趣味じゃない。
それは剣士以前に人間の男なら誰しもだ。
そこは譲らんぞ。」
「でも…。」
「自分を守れと言ったはずだ。しかし手加減はしないぞ。それとこれは別問題だ。」
「承知しました。」
素直だ。
それでいい。
己の信ずるもの、師と思うものの言葉を聞く奴は必ず強くなる。
まだ、お前はこれからだ。
自分を大事にしながら、強さに妥協なく貪欲であれば、その成長も安定したものになるだろう。
まだ初日。旅立つ頃には精神的なものの障壁は乗り越えるだろう。
それだけで戦い方も変わる。
後ろについて来る一人の若い女剣士に期待を込めて握ったままの細い手首をしっかりと握ってやった。