第5章 赤い腕章
この女、いや、リドル・ユリと行動を共にするようになってからは驚きの連続だった。
特に感じたのは時と場所でさえも剣と同じく剛と柔を使い分け、味方と認めた者には最大限の敬意と配慮。
医術や栄養学、顔を見るだけでどこが悪いか、栄養の偏りがあるかを見極められる能力。
俺が出来なかったヒヒを手懐けるということをたったの1時間足らずの時間でやってのけたこと。
宣言した通りに家政婦並みに家事をこなしてしまう能力。
関係はないが料理や食材の知識や趣味が同じ傾向がある。
周囲を簡単に愛で満たす、まさに
2人目の海の女神のようだった。
そして、それらを前提としながらも驚くほどの強さへの執着。
腹や胸を動きにくいからと息が浅くなる程に晒しで巻き上げ、敵に表情を読まれぬよう仮面で隠し、
女として生きているというよりは戦士として生きているように思えた。
女戦士、女海賊とこれまで何度も出会ったことがあった。
しかしユリは
化粧や身なり、話し方は女性らしく綺麗に整えていても
ここまで女であることよりも戦いに重きを置く女は始めてだった。
そしてその戦いぶりから、剣の一撃の強さから、女にしておくのがもったいないと思い口に出す。
しかしそれは大きな勘違いであり、何よりもユリの生き方に対して無礼な思い込みと発言だったということを思い知らされた。
「わたしの中に妖怪が宿っていればこそでございます。
わたしが女であるがゆえにこの妖怪は宿りました。」
「わたしは、もって生まれたもの全てに誇りと愛をもっております。」
「故に!女で生まれて本望!男でなくて悔いたことなどただの一度もございません!」
そう言いきって再び斬りかかったユリの表情は
俺の胸を強く貫くほど
ましてや、今まで出会ったどんな輩よりも
戦士として、女として最高に美しかった。