第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
魚人島。
1ヶ月あまりの航海。
ようやく師匠との初対面が間近になってきた。
それは、逆に白髭海賊団との暫しの別れを意味する。
最後でないにしても、次がいつになるのか全くわからない。
マルコはユリと師弟関係になったが、それでもどのくらいの頻度で会えるかわからない。
魚人島に行く海に潜る前日、島に着いたら王宮に呼ばれるだろうと、一足先に送別会という宴を我々のために開いてくれ、ワノ国の舞曲を3人で披露し盛り上がったばかり。
ここに来るまでは親父の肩に乗せて貰って海を眺めたり、深海の生物や海王類の名前をナミュールという魚人の隊長に教えて貰った。
何故か海の中はいろんな声や音が囁きあうように聞こえる不思議な空間。
マルコは力に選ばれた人間にしか聞こえないと言っていた。どういうことだろう。
魚人島は親父の縄張りらしい。街のみんなが白髭海賊団を歓迎し、中でもジンベイという者が親父と我らの前に出た。
「オヤジさん。よくぞおいでなすった!オヤジさんがここを縄張りにしてくだすってから、人拐いが見えるように減り安堵しています。」
「ジンベイ、出迎えはいらんといったはずだぞ。今回の訪問はコイツら3人をある男に引き渡すためだ。
紹介する新しい"俺の子"だ。」
「某、ヨシタカと申す。」
「ユリと申しまする。」
「ユキともうしまする。」
「ジンベイじゃ。お初にお目にかかる。その物言い、生まれはワノ国か?」
「ジンベイ、確かにワノ国の生まれだが、コイツらが大人になるまでは隠しておかなければならん。あの国で戦乱が起きるかもしれんので連れてきた。
氏族の側近の子供で特殊な能力を持った血族の末裔だ。」
「あいわかった。
それにしても、礼儀がよく愛想もよい。
オヤジさんがこのような幼子を"子"と認めたんじゃ。
ワシも影ながらお前さん達を気にかけることにしよう。」
そういうと頭を優しく撫でた。
水掻きがついている手は帽子のようにすっぽり頭を覆った。
「有り難きお言葉。誠に心強ぅございます。」
妹二人も某の後ろで深々と頭を下げた。
ジンベイは暖かい目を向けていた。