第5章 赤い腕章
1年前、立ち寄った孤島の波止場で海賊4隻が1隻の商船を狙い航行中のところを目の当たりにした。
世界の大商社と言われるディルバリーカンパニーは、海軍がおらずとも自前の護衛隊を雇うなどひとつの国家のような体制を持つ商社。
海軍、世界政府とも取引があって我々七武海もあの商社は手を出せないことになっていた。
戦局を見守ろうと見晴らしのいいところに船を移動させる。
すると先ほどのディルバリーの船が気配はあるのに姿がない。
それと同時に朱い炎を纏う龍と、大きな猛禽類の鳥に股がる仮面の女が現れた。
「かなりの手練れだ。あんな女見たことがない…。」
まだ、手配書ですら見たことのない容姿。しかし、どこかで見たような気もしないではない。
歳はまだ若い女。
見たことはないはずなのに、その女が気になり戦う姿を見守った。
炎の龍は船を燃やしながら破壊し、女は強烈な斬撃で船を真二つにして沈めた。
その美しくも豪快な太刀筋でわかった。20年以上前に水星のごとく現れた海の女神と呼ばれた女。
「まるで、あの女と同じではないか....。」
女は、ビッグマム海賊団の策略に陥れられ、その後、何かの政略かカタクリと婚姻。
その一報以来表舞台から姿を消した。
一度は剣を交えたい。
そう思って止まなかったというのに。
一度諦めた対戦だった。
それなのに、同じ戦法で全く同じ太刀筋の女が、別人とわかりながらもすぐそこにいる事に興奮を押さえきれなかった。
こんなに胸が踊ったのはあの海の女神の戦う姿を見たとき以来だった。
「........見事な太刀筋だ。商船の護衛とて政府も放っては置かんだろう。
いずれ、会おうではないか。」
あの日心からそう思ったのだ。