第5章 赤い腕章
「気を害しましたらごめんなさい。
それに、急に押し掛けてきたのにも関わらず、ここまで手の込んだ料理作っていただいて有難うございます。」
「別に急に押し掛けてくるのはオマエだけではない。」
それを言われて、あぁそれもそうかと何処かの能天気な赤い髪の義兄の笑顔が頭をよぎって、
「……。いつもお騒がせしてます」
と思わず頭を下げてしまった。
「全くだ。さぁ、冷めないうちに食べろ。」
全くだと言いいながら少し笑みを浮かべていらっしゃる。
なんだかんだ言ってやっぱり仲がいいんだなぁと思って見ていた。
「はい。有難うございます。戴きます。」
どこぞの高級レストラン級の上品な味付けに驚いた。
いや、本当に。
美食家なのだろうワインも見たことないものも並んでいる。
「仕事柄いろいろなシェフの料理を食べてきましたけど、こんなに隅々まで計算された芸術のような料理って始めてです。
自分ではここまで出来るか解らない……。」
「解るか?」
「はい。しかもどれも美味しくて。
勉強になります。」
「価値の解る奴に飯をだす事ほど、気分がいいモノはない。」
初めて目を見て笑った。
「食の嗜好が似ていると、こちらも楽しいです。」
フッと笑ってまた食事に戻る。
貴重すぎはしないだろうか?
というよりそういうことを言える人だったんだ。
凄く堅物だと思ってて本当にごめんなさい。
なんだ、プライベートはそんなに堅物じゃないんだと思うと少し気が楽になった。
それからは、男の人は集中して食べたいものだろうからとあまりこちらから話さなかった。
だけど、本当に料理が好きなようで、時々食材や、調理法なんかも色々教えてくれた。
それらの話がどれも興味深くて、新鮮で凄く楽しい時間を過ごした。