第5章 赤い腕章
全てのヒヒの手当てを終えて、城へと入った。
この誰もいない古城で、一人で住まわれているのかと思えば、寂しくないものかと思ってしまう。
そもそもなぜ一人で生活されるようになったのか。
そう思いながらミホーク様の気配がする方へ足を進めた。
もう食事は用意していただけたよう。
誰もいない古城で二人だけの靴の音がよく響く。
一部屋明かりが漏れていた部屋へ、様子を伺いながら近づきノックしようとすると、
「入れ。準備はもう出来ている。」
「あ、はい。有難うございます。
これからお世話になります。よろ「挨拶はいらん。」
はい。」
「座れ」
促されたテーブルには本当に王宮らしい皿の上に、ここ数時間で作ったとは思えない手の込んだ料理が並んでいた。
「随分早かったが、重症なヒヒだけを手当てしてきたか?」
「いえ、途中でヒヒが手伝ってくれて、何とか短時間で全てのヒヒを手当てすることが出来ました。」
「なに?!」
「え?」
「ヒヒがオマエを手伝っただと?しかも、仮にそうだとしてもこんな短時間であの数をこなしただと?!」
こんなに驚かれているミホーク様の表情は初めてで面食らったけど、無理もない。
それに、あの力を誰も見ていないもだと確信できて安堵した。
「はい。それはもう、覚えも早くて、回復力も凄ましく。驚かされるばかりでした。」
「いや、おかしい。それでも「それ以上はわたしの機密でございます。明日キチンと治ってることがご理解できるでしょう。それ以上はどうか詮索しないで欲しいのです」
納得がいかないらしいミホーク様は近くの窓を開けられて外をご覧になった。
気配で情報の真偽を感じ取ってるようだけど、意味が解らないと呟かれ窓の外を身を乗り出してみていた。
「そのように驚かれるのですね。少し嬉しゅうございます。」
「何がおかしい」
「人間味のあられる方だということが解り安心しただけでございます」
「俺はそこまで化け物ではない」
おそらく、家にいるプライベートまで化け物のように振る舞っていないという意味だったのかもしれないけど、
返ってきた言葉がなぜか憂いを帯びていたような気がした。