第5章 赤い腕章
再び、ミホーク様を背に咲に乗って、シッケアール王国へと飛び立った。
しばらく飛んでシッケアール王国のあるクライガナ島近郊に差し掛かると辺りが暗くなってきた。
「ユリ。
シッケアール王国にはこの土地で起きていた長い内戦を見て戦いを覚えたヒューマンドリルと言われるヒヒがいる。
そやつは、侵入者を許さないが強いものにはひれ伏す。
俺は後から上陸するから、先に上陸しヒヒを征服してみよ。
覇王色の覇気と式神の使用は認めない。
純粋なオマエの武装色を纏わせた剣術のみで戦え。
それをどれほど時間をかけずにできるか。
それが俺からの最初の課題だ。」
「畏まりました。
剣術で殺さぬよう征服すればよろしいのですね?」
「あぁ。そうだ。やってみよ。」
闘争心からか自然に雪女の魂の黒い笑みが浮かんだ。
「俺は我が船で戦況を見届ける。
征服した後、咲に乗り我が船に来い。
俺はここで降りる。」
「最短で戻ります。」
「楽しみにしている」
高所をものともせず飛び降りて棺舟に乗るミホーク様を見届けると、
ポンと咲の背中を蹴り急降下を指示した。
タイミングを見計らって降り立った場所には砂煙がたち、それらは風によって闇に書き消された。
妖刀水孤、氷傀(すいこ・ひょうかい)をすらりと抜き、両手に持つ。
見聞色を使って周囲の気配に意識を向けるとおびただしいヒヒの群れ。
早速わたしに気づいたのか、ヒヒ達が息を潜めてこっちへゆっくりと動き出した。
「へぇ…。動物なのに強そうな者もいるのね。」
わたしを見定めたのか、ヒヒが作ったのであろう剣などの武器を持ったヒヒ達の動く速度がどんどん早くなる。
さぁ、ゲームの始まり始まり
いったいあなたたちは何分持ちこたえられる?
わたしは双刀を前で絡ませるようにして構えた。