第5章 赤い腕章
ミホーク様に案内された場所は思っていた通り、戦闘服の工場(こうば)
主人らしき人の様子から、深く信頼関係がある服飾職人なんだろう。
初老の上品なおじ様とその奥様が、にこにこと愛想よく対応している。
なにやら話し終えると、奥様に奥の部屋へ通され、採寸してもらうことになった。
どうやら、わたしの体に合わせたコルセットを見繕ってくれと言われたようだった。
「ジュラキュール様と、ケルディア・ラング・エデル様御兄弟は当店と長い付き合いになるんですよ。
ジュラキュール様が女性を連れてこられたのは初めての事でございます。
そして、あのように柔らかい表情をはじめてみました。」
「そうですか.......。別にそういう間柄でもなく、兄たちが付き合いでお酒の場を囲ってただけで、実際にお会いするのは今回の海軍からの呼び出しに参加した今日が初めてだったのです。
なのにわたくしの急な修行の申し出に快く答えていただいて...。」
「そうだったのですね。
ご表情やお話される様子から、色々感じてしまうのですが、あなたは聡明で、お優しいのでしょう。
それに、あの大海賊のご家族と名乗られながら、お強いのに謙虚で品を感じます。なのに少女なところもしっかりとあって.......。」
「嬉しいですが、恥ずかしゅうございます。
それくらいにしてくださいまし。」
「ホホホ。やはり可愛らしい。
そういえばエデル様も上司を連れてくると仰っておりましたよ。あなたの事ではないですか?」
「エデルが?」
「えぇ。彼もまた、優しいお顔をされていました。
みなさんリドル様がお好きなのですね。
わたしどもには彼らの気持ちがよく理解できるような気がします。」
『この魂をお持つ者の特権は人に恵まれることでもありんす。』
白菊様の言葉が不意によぎった。
たしかにその通りだとおもう。
いろんな人に恵まれて、今のわたしは奇跡的にこの立場を支えられている。
こんなにも気難しそうにおもっていたミホーク様まで、わたしの師匠になってくれるのだ。
でも、この力はちょっと強力すぎはしないだろうか?