第5章 赤い腕章
ルノワール島コスペローザ王国
繊維と闘技服、貴族の衣装の生産地で知られるこの国は、生活物資の取引でディルバリーとも縁のある場所。
勿論、護衛官である部下エデル、ミゼルの衣装もオートクチュールでここで調達したもの。
だけど、わたしが直接ここにくるのは初めてだった。
人通りの少ない林道に降り立ってから、咲を放ち、服飾職人の工場が立ち並ぶ街へと向かった。
面をつけたままのわたしでも、何度も掲載されてきたからか認知度はここでも高く、わたしを見つけるなり、人だかりができてしまう。
「おい、なんで、商船護衛の式神使いと鷹の目が一緒にいるんだ?」
「今日も美しいユリ様。なぜ、七武海と?」
「なんでも、七武海召集にユリ様がお呼ばれなさったってよ。
しかも、海賊どもは珍しく全員参加。
あそこまでの活躍をされたんだ。
みんなが放っておくはずねぇ。」
中には、某ゴシップ雑誌を鵜呑みにしたのであろう者からの誹謗中傷も飛び交う。
エデルと恋人だとか、白髭海賊団の隊長を手玉に取ってるとか、
シャンクスとの関係もしばしば。
全部捏造されたもの。真実はなく面白半分でやってるのだ。
理由は簡単。
わたしが、海賊の娘だということで陥れたい存在だから。
でも、付き合いがある人たちはみんな解ってくれてたらそれでいい。
真実を知ろうとしない人間は大抵、そういうわたしみたいな人や海賊。反社会勢力を叩いて自分の存在価値や正義感を守る。
正直くだらない。
だから気にも留めない。
でも、
これ、ネタにされてシャンクスあたりにでもバレたら説教どころか修行に乱入してこないだろうか.......。
それだけが気がかりだった。