第5章 赤い腕章
「急だが寄るところが出来た。
咲だったか?
ルノワール島コスペローザ王国へ寄ってくれ。」
シッケアール王国から数えて3島手前。
繊維と闘技服、貴族の衣装の生産で有名な町。
咲はググと低い声で返事を返し、進路を僅かに北へ向けた。
「何をするのです?」
「ある店に寄る。修行に必要なものだ。」
何となく見当がついたユリは、目を見開いてミホークの方を振り向くも、
思ったより顔が近すぎて驚き、慌てて視線を前に戻した。
「短い期間の修行だ。短期間でもオマエを強くすることが契約だろう。
万全の状態でなければやる意味がない」
「はい。」
わたしは教えてもらう側。
師のいう事ならば万全じゃない状態で教えを乞うのは礼を欠く行為。
そこまでしてくれるんだ。
抗うわけにはいかない。
「しかし、オマエはその状態でも今までの活躍があった。まだ伸び代は大いにある。」
「有難うございます。精進します。」
わたしの背でミホーク様が微かに笑ったのを感じた。
それからは、特に会話もないまま
風の力を味方にして咲と共にルノワール島コスペローザ王国へ。