第5章 赤い腕章
飛び立ってしばらく経つというのに、お腹に回された腕の力は緩む気配がない。
初対面なのに、しかもシャンクスの....本人たちは否定するけど友人のような関係の人に、ずっと教えてもらいたいと思って一種の憧れのようなものを抱いてた人の体温がぴったりとくっついてるこの状況。
お互い生きてるから当たり前なんだけど.....
背中が凄く熱い
緊張で体が硬直。
こんな事するような人じゃないって思いこんでたから尚更だ。
どんなに誤魔化してもこの距離…というより、距離がない状況じゃ体温や脈の上がり具合ですぐバレる。
態度は平静を装っているものの脳内はアタフタしてるこの神経は思春期の女子じゃないかと自分で突っ込みたくなる。
「どこに船を停めてこられたのです?」
「シッケアール王国だ。今回は直接の迎えだった。」
へ……?
「........そうですか。」
ここから遠い。........かなり遠い.......。
この子で移動しても早くて5時間程度だろう。
でも、降ろして別で行ってくださいなんて、死んでも言えない。
ミホーク様から言っていただいても言えない。
手綱を引く手に無意識のうちに力が入ていた。
「息が浅い。今だけでないようだが、いつもこの状態で戦っているのか?
それに、腹回りが尋常じゃないほど固い。」
前振りもなく指摘されたことが、マルコにも口うるさく言われたことで、ビックリして思考が止まった。
「はい。動きにくいので晒しを巻いております。」
「動きやすさも大事だが、呼吸はそれ以上に大事にしろ。
持久力と集中力は脳内に酸素が回らなければ持続しない。
呼吸の方へ重きを置けば確かにスピードは落ちるかもしれない。だが判断力が研ぎ澄まされる。
オマエは戦士でもあれば医者でもあろう。
他人に施す前に己の体も考えろ。
それが出来てなければそこらの海賊の船医と何の変わりもない。
解るか?」
グウの音も出せない。正論過ぎるし説得力がありすぎる。
だからといって説教じみた言い方ではなく、言葉の端に悟らせるような優しさを感じた。
「仰せの通りでございます。
返す言葉もございません…。」
ただそれだけしか言えなかった。