第5章 赤い腕章
「会議でのオマエの言動はなかなかなモノだった。
肝が座った女は若かろうが嫌いじゃねェ。」
「何が望みでしょう?
うちの会社はあなたのような真っ黒な人とは取引するものなどございません。
ご存じでしょ?
わたしも何を企んでるか解らないあなたと関わるのは嫌でございます。」
「フフフフフ!ツレねぇなぁ。そっちはまた後でいいさ。
それに、表上の物質の取引は今も世話になってるしなぁ。
俺が欲しいのはオマエ自身さ。リドル・ユリ」
この人が欲しいのはわたし自身というよりは、わたしが持ちうる戦闘力と交渉力。
心を機能不全にした最強の操り人形を欲している様子。
ドフラミンゴの能力イトイトの実の力で息がかかる程の至近距離に引き寄せられ、腰に手を回された。
「わたしに敵うとお思いで?
随分強気でございますね。」
「フフフフフ。こんな状況になっても強気でいられる肝が座った女も悪くねぇ。」
ユリは、カッと目を見開いて覇気によって絡まった糸を凍らせ破壊した。
「面白い。俺の糸を破壊させるとはなァ。青雉と似たような性質かと思えば少し違うなァ。
繊細なわりには強度が普通の氷じゃねェようだ。」
「若い女だから弱いとは思わないで戴きたい。
あまりアマく見ては大ケガなさいますよ?」
すぐに何かが飛んでくる気配がして、瞬で刀で受け止めるとキーンと甲高い音が階段を通して響き渡った。
「ここでの騒ぎは禁物でございましょ?
わたしはあなたとは取引するつもりはございません。
早々にお引き取りを…。」
糸の弾丸を弾いた氷傀を覇気をまとわせ喉元に突き付けた。
それでも表情を変えずに黒い腹の内をさらすような笑みを浮かべている。
「フフフフフ…。何をしてもオマエへの興味は沸くばかりだ。
今日のところはこれで引き上げてやる。」
そう言うと桃色の羽のコートを翻し、雲に糸を飛ばして窓から空の彼方へ消えていった。