第5章 赤い腕章
再び廊下に出ると、言い争うような声に思わず身を潜めた。
角を曲がったところの階段の踊り場で手すりに腰かけていた大きな影はドフラミンゴ。
あと一人は、会議に出席していた上層部の人間。
「何を勝手な!そんなこと、許されるはずがない!」
「いいのか?取引を解消しても。
俺はいいんだぜ?契約が切れて困るのはテメェらの方だからなァ。
そしてオマエらはまた俺に弱みを握られる。
こっちにとっちゃァ取引先が消えるだけで何の負債にもならねぇからなァ。」
何の取引?
海軍もあの男と裏の取引があるのなら完全に黒。
武器の密輸の噂も色濃く各国を戦争へと導く男。
あの男の武器の仕入先はどこ?
そことどのような取引であんなに大量に武器を仕入れられる?
些細な糸口からの疑問符が次々と頭をよぎる。
同時に世界政府の裏でやってることの闇深さに対する呆れが増した。
それからも話しは続いたようだが、抽象度が高く内容まで理解することはできなかったけど、世界政府の弱みをあの男が握っていると言う事実が理解できた。
何となくだけど、ドフラミンゴの取引相手が気になった。
ミゼルに調査頼めるかしら?
そうこうしている間に政府が話の人間は去り、なぜかドフラミンゴだけがその場に残っていた。
面倒ね。これじゃ避けて通れないじゃない。
もう少し様子を見てたけど立ち去る気配がないのでやむを得ず歩き出した。
「随分待ったぞ。リドル・ユリ。」
ニタリと笑みを浮かべる視線は獲物を見つけた蛇のよう。
「わたしごときに何のご用でしょう?」
ユリは視線をあわすことなく淡々と冷めた口調で尋ねた。