第5章 赤い腕章
「お言葉を返すようですが、わたしは家族を愛し、わたし自身の立場、役職を誇りに思っております。
それは、ガープ中将とて同じでございましょう?
御子息が世界の大犯罪であろうとも。」
当然、室内の温度が下がるほどの爆弾発言に、皆は静まり返った。
特に同席している海兵は石のように固まってしまった。
ムリもない。
この話は公に知られていたとしても、海軍ではタブーとされている話題だから。
ドフラミンゴと、クロコダイルは面白そうに口角をあげる。
ユリは表情ひとつ変えず、センゴクは握りしめていた拳がワナワナと震えている。
ユリの味方につこうとしている、ハンコックとジンベエはセンゴクの出方を待つ。
水を打ったような静けさが1秒の時間を長く感じさせるような緊張。
その緊張を破ったのはまさかの当人だった。
「ふぁっはっはっは!
肝の座った奴じゃ!確かにのう。縁を切ったとはいえ家族は家族じゃ。
ワシの事例を言ってしまうのなら、海賊の道を選ばず、革命軍やその他の反世界政府の組織に属することもしておらんのに、理不尽極まりないじゃろう!
お前の家族を思う心も理解できる。」
「余計なことを軽々しくベラベラしゃべるな!ガープ!!」
センゴクからゴツンと大きな音を伴う拳骨を喰らったガープ。
その場で悶えながら大きなたんこぶができた頭を震えたてでおさえ、テーブルに伏した。
「律儀で堅苦しい女だからこそ、ディルバリーや家族さえ守れれば下手に海軍に楯突く程の大馬鹿者ではなかろう。
彼女は生い立ち関係なく反社会勢力ではない大企業組織の最高幹部に認められた。
それに、それだけの書類を集める事ができる人望の持ち主だということであろう?
護衛登録で充分だと思うが?」
それまで会議の行方を見守っていた一人に視線が集まった。
ジュラキュール・ミホーク。異名を"鷹の目"。
シャンクスの戦友ではあるものの面識は全くない。
そして、世界の大剣豪とも称されるほどの男なら、聞いた話だけで人を判断するわけもなかった。
ユリはまさかの助け船を出した鷹の目のミホークにただ驚いていたが、それはこの会場に居合わせた者一同がそうだった。