第5章 赤い腕章
先に会議室にいた役員が起立、敬礼し二人を出迎えた。
「今回は王下七武海制度が始まって以来の全員参加。
これは異例で特別な出来事だ。
それほど、"式紙使い"リドル・ユリ、お前に注目が集まっているということだ。」
「はい。このような場にお呼び立ていただきまして身の引き締まる思いです。」
センゴクの目をそらさず、少しの隙も見せない。
その気迫に元帥は僅かに口角を上げた。
「兄にも勝る気品と気迫だな。噂以上だ。
お前にも手を焼くことになだろうな。
海賊の道を選ばなかったのが唯一の救いだ。」
「先に申しておきますが、わたしにとって今でも家族は赤髪と白髭の海賊団とその傘下、領民でございます。
彼らに背を向けることは生涯ありません。」
「ならば、七武海の勧誘を蹴ると?」
「はい。海軍に武力を提供することは断らせていただきます。しかしながら、わたしは護衛隊長の責務を果たさなければなりません。
そのための武力行使を公式に認めていただきたく、ここへ参りました。」
それを聞いて、険しい顔つきで睨むセンゴク。
ユリは各席の後ろをまわり、センゴクの前に紙束を広げた。
「これは、わたしが今までに訪れた国の王、そして、我がディルバリーカンパニー代表取締役、ボル・ディルバリーの推薦書でございます。
わたしの仕事はディルバリー全社とその地域を守護し、全社員の健康、安全を守る事でございます。
七武海の称号も、その他の特権にも全く興味がございません。
わたしの判断で、敵、味方を判別し戦っていく所存。
海軍の傘を持たずとも、わたしは商人でございます。
海賊を生業にしてはおりません。
生まれも育ちも家族も海賊だからといって、わたし自身は海賊ではございません。
そこは勘違いなさらないで欲しいのです。」
言葉は選びながらも、ユリが全く勧誘に応じる気がないのを知ると、センゴクはダン!!と大きな音をたてて机を叩きユリを睨んだ。
「何を勝手な!
ただでさえ、革命軍や海の皇帝たちの幹部同等の力を持ちながら、世界に巨大な力を見せつけ、影響力も兼ね備えるお前が、野放しにできないからこその勧誘だ。
海賊ではないからだと?
海賊に育ててもらっておきながら、その言い分は通用せんぞ!」