第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
ワノ国を出て3週間目。
ヨシタカは隊長達に稽古をつけてもらったり、考古学や伝記などの勉学に付き合ってもらっている。
ユリは毎日のように朝食を終えたら俺の部屋に来て、植物、人体の図鑑やら読みながらいろんなことを聞いてくるが、その質問もいい質問で、解らないことがあれば一緒に調べたりしたもんだ。
一方、ユキは朝方、母の形見として持たされた篠笛というワノ国の笛を、ユリに吹いて貰ったり、昔声楽を習っていたというナースと一緒に歌を歌ったりしている。
ときどき、夕方になると親父の気分で夕食の時間に歌わされて、顔が真っ赤になりながら一生懸命に歌っていた。
年相応の歌い方であるものの透き通るような綺麗な声で歌う。
ナースに教えてもらったのか、"ビンクスの酒"などの海の歌も歌い気づけば大合唱になることもしばしば。
踊ることも好きで、歌いだせばクルクルと我流で踊っていた。
野郎共はそんなユキを見てメロメロ。
こいつら、そもそもガキ好きだったか?
でも、あきらかに3人が来てからいい意味で船の雰囲気が変わっていた。
ヨシタカ達が下船するまで、あと一週間ほど。
レイリーとの打ち合わせで、魚人島で落ち合うことになっている。
シャクヤクも連れてくるらしい。
軽く3人の事は言ってあるが、もともと自分の子がいない二人は、我が子になるであろうヨシタカ達を楽しみにしている。
こんな良い奴等なんだ。
きっと良い家族になるだろう。
そう思うと、また会えるというのに少しばかり胸の辺りにすきま風が吹いた。
凄く濃い時間だった。
あと一週間やってあげられることはしてあげよう。
魚人島に行くまでの海の中を見せるのも楽しみの一つ。3人も、それを楽しみにしている。
「まるこせんせい!ここおしえてくださいまし!」
俺の小さな愛弟子は、人体の内臓の仕組みを勉強中。
飲み込みが早く教え概がある。
俺は丁寧に教えてやると、また眩しいばかりの笑顔でありがとうと言った。
本当によくできた子供達で才能と素質に溢れている。
おでんが国から逃がしてでも守りたいと思うこの兄妹の価値はよく解ったよぃ。
まだ生きているであろうかつての仲間に、こいつらを大人になるまで守り、育て抜くことを誓った。