第4章 力を持つ者の使命と宿命
「悪いな。人がついてきて見ているところで話すのは苦手だ。
普段私があまり話すことがないから、珍しがってそうするのだろうが 。」
「まだ出会って間もないのにどうしてそんなに話してくれるんです?」
「さぁな。」
エデルはグラスに二人分のワインを注ぐと片方をユリに差し出した。
そして、触れるだけの乾杯をした後に一口飲み干して二人の間に置く。
もうその話はよしてくれという感じにとったユリは白菊に渡された記録書なるものを広げた。
そして今まで聞いたこと知ったことを全て話した。
当初は治癒の目の事を話すのはまだ早いと思ったが、エデルが「時折翡翠の色がちらついて特別な力を感じると言われたので話すことにした。
すると、エデルの赤い目の事も話してくれた。
精神支配ができて、気絶させたり短編的な記憶操作と意思の操作ができるらしい。
そして勿論そういうことができるのは相手の記憶を見ること、つまり過去を知ることができるという。
ただ私と違って1ヶ月以上の記憶は見えないし見ようと意識しなければ見れないらしい。
貴族階級以上の戦士ほど精神支配の力は強力なのだが、ルケドニア王国時代には規則として、今では身を隠すために能力を使うことに一定の決まりがあるという。
簡単に纏めれば私利私欲のために使ってはいけないということらしい。
今朝話しているときに意思が支配されたような感覚がしたのは、何か目が合う以上の事が起きそうだったから反射的にブロックしただけのこと。
でも、そこまで言ってもその能力に対して少しだけ警戒心が残ったのは女としての防衛本能なのかもしれない。
ちなみに記録書から得たものは冷体温症になったときどう対処したかとか、修行と魂に飲まれないための忍耐力が書かれていた。
話をして、一緒に記録書を読んでもうここから見るみんなの部屋の明かりもない。
静かになってまたワインを飲み始めたエデルの背を見ながら、ふと思いに更けたところでいつのまにか睡魔にのまれた。