第4章 力を持つ者の使命と宿命
「では、私もあの記録書以外にひとつだけ打ち明けましょう。
私はワノ国のそれなりに地位のある侍の娘でした。
そして、今あの地にいるのは四皇、百獣の王カイドウ。
あの男を討ち国を取り戻すために6年後帰郷せねばなりません。」
私の直属の部下になるのなら、いづれは解るであろう事をそのまま伝えた。
この人は他の人と違って目が合うだけで信頼できる人かは解らない。
でも、信頼に値する人だって思えたのは、彼のまわりからの評価と自分が感じたことに相違がない人間性と、少しだけ感じるわたしへの好意があったから。
そしてボルさんへの思いがわたしより強いと感じたから。
「社長は知っているのか。」
「勿論です。その前提でも私の力が欲しいと言ってくださいました。」
「そうか....。
ならば私にはもう取り返す島がない分。
できるだけの情報をミゼルから聞いてみよう。
社長からミゼルにワノ国の情報収集を頼まれていたが、成る程な。そういうことか。」
「そんなことまで.....。」
「もう仲間だろ?
それに同じ境遇で、しかもまだ取り返せる余地があるなら、私たちが成し得ない分協力したい。
幸い弟は通信虫は全てハッキングできる。
世界政府非加盟国で鎖国制度をとっているワノ国などの情報も入手できる手段を持つのはミゼルだけだ。
これはディルバリー総本部と新世界支部の機密条項。
情報は漏らしても手段は教えてはならない。
もし、海軍や世界政府にバレればディルバリー自体の存亡にも関わる。
まぁ、ハッキングのリスクを考えて海軍や世界政府に使うことはほとんどないがな。」
あそこまで信用していたボルさんならそうすることも理解できた。
会社の機密は幹部であれば知りうることと言えばそれまでなのだが、エデル側のメリットがよく見えない。
「ユリの機密が多そうだからwin-winになるように話しているだけだ。
弱点を敵に知られればそこを突かれる。
だが、味方同士で機密を分かち合えば補い合えるだろう。
ただそれだけだ。」
「さぁ、食事も終わる。そろそろ本題に入ってもらえおうか?」
気分を変えようとお酒と共に連れていかれたのは展望室。
移動中にいくつかの好奇な視線を感じた。