第4章 力を持つ者の使命と宿命
「わっちの体調もあるため、翌日にはここを経ちんす。
ユリに出会えたこと本当に嬉しかった。
来てくれて有り難う。」
見送りは白菊の船を降りるところまで。
私の手を取りながら優しく笑う白菊様に、次に会うことはないと言われた事もあってまた涙腺が緩んでしまう。
すると白菊様は屈んで私を優しく抱き寄せた。
「泣き虫でありんすね。
本当に良い子。
でも、ユリは情に脆いだけ。芯はわっちより強うありんす。
これからも、ユリには沢山の出会いがありんす。
この魂をお持つ者の特権は人に恵まれることでもありんす。
どうか、これから起きる生きる上での荒波をユリらしさを損なうことなく歩んでおいきなんし。
わっちはどこにいてもユリを一人の親族として思うておりんす。」
その言葉の端に、今は亡き母上の片鱗をみた気がした。
「有り難うございます。白菊様もどうかお元気で。」
そう言って抱き締め返していた手を離し、深く頭を下げてその場を去った。
本当に死ぬ予兆が出て先が短い事が解っている人に"お元気で"という言葉は不謹慎だったかもしれない。
だけど、死と向き合いながらも日々を一生懸命に生きている白菊様を思えば、その言葉以外の選択肢は思い浮かばなかった。
咲を肩に乗せて夜道を進めど
こちらから白菊様の姿が見えなくなっても、私の後ろ姿を見送る暖かな視線が感じられた。
ふと空を見上げれば下弦の月。
夜道を照らす月明かりを頼りにディルバリーの船へと帰っていった。