第4章 力を持つ者の使命と宿命
「ユリは死が怖いかい?」
少しの沈黙の後、白菊が切り出した。
「怖いかと言われれば怖いです。
しかし、武家の娘として生まれたときから父上やおでん様から覚悟をもって生きることを常々言われて参りました。
そして、海に出てからも常に戦闘と隣り合わせの生活です。
いつ死ぬか解らない現状を受け入れています。」
「白菊様は、これからどうするおつもりで?」
「わっちは、今ほぼ隠居生活さ。時々ママのビジネスに口出し、そして兄妹や子供の稽古をつけたりする。
もう妖力は全盛期の半分の力も出せなくなっちまった。
できれば稽古つけてやりたいけどね。ここで目立つ事でもすれば旦那に迷惑かけるやもしれない。」
やはり父さんが言ってたようにビックマムの影の影響者であり、信頼も厚い人物なんだろう。
物語で聞いた白蓮宗家の頭主ような女性像は持ち合わせていると感じた。
ただでさえ普通にしている状態でも魂に飲まれているのに、私に稽古をつける気でいたことをただ有り難く思った。
「そのような話を聞いた後で無理にとお願いできません。白菊様はどのように強くなったんでしょうか?
私は長期戦になると魂に飲まれそうになるのです。」
「ユリはついこの間その力に目覚めたばかりでありんす。
ひたすら戦っては保温機に入るということでしか克服できません。
しかしながら強き者に挑んで鍛練を積めば、その分耐えられる時間が延びていきましょう。」
「気を付けるのは男共でありんす。
強きものほど引き寄せるというのは良き者悪しき者問わずでありんす。
幸いユリは人の心を読むことに長けているがゆえ人選は間違いないでしょう。
しかし、所詮男。惚れているか気心知れてる男以外に気を抜けば痛い目に会うのは女でありんす。
己が身は己で守らねばなりません。
わっちは遊女でありんしたから水揚げは16の頃でありんしたがユリはまだ男所帯と言えど大事に扱われてそういうことはないのでしょ?」
元職業柄なのかもしれないが、まさかここで性教育されると思ってなくて面食らった。