第4章 力を持つ者の使命と宿命
『これが妖怪の魂です。
もう一度頭主様に尋ねます。
私の怨念から生まれたこの魂が昇華される日まで、あなたは子孫を呪いにかける覚悟はおありですか?』
「この国と、主である光月家の繁栄のためとあらば喜んで引き受けましょう。」
キッパリと言い放った白蓮宗家頭主に紅條家頭主、与助はその強い眼差しに魅せられた。
「忝ない。」
与助が白蓮宗家頭主に向き直り両手をついて額がつくほどに頭を下げた。
「頭を上げてください。私は子孫共々力を得て今より光月家の御役に立てるのです。」
そう言った彼女はこれからの自分の意思で背負う代々受け継がれる運命とは裏腹に穏やかに笑っていた。
『術師の方々、頭主様とこの妖怪の二つの魂への祈りをお願いします。』
札を紅條頭主から受けとり、心臓のあたりに当て、数珠をかけた手を合わせる。
バチバチと放電する妖怪の魂を目の前にしても、入魂の儀式が始まっても白蓮宗家頭主の穏やかの表情を変えることはなかった。
彼女の心中はどのようなものだったのか定かではない。
しかし、彼女の様子から察するに、まるで増幅した怒りと憎しみの魂に恐怖どころか見返りを求めない無償の愛を送っていているようだった。
そして彼女がそれが出来るほどの人間であったことをユキノは見抜いていたのだろうか.....。
その後も、妖怪の魂と融合する瞬間が終わるまで、少し苦しい表情を浮かべ脂汗も出たものの、少しも声を出すこともなく新しい魂を受け入れていった。
同時に彼女の娘にも魂が入り彼女も母のように魂と宿命を受け入れて母を攻めることは一切しなかった。
その後、少女が18歳を迎える頃に力が開花し、次期頭主として活躍し、入魂の儀式をした母親は43にして、体温を下げながらゆっくり魂に飲まれるように永遠の眠りについた。
ちなみに以後、国も栄え、光月家も子宝に恵まれ才能と愛に溢れた強い男が将軍の座を守り続けることができたのだ。
そう。光月スキヤキの代までは......。
それが時代の流れなのかユキノの魂の意思の力が弱くなったからかは誰もわからない。