第4章 力を持つ者の使命と宿命
「なぁに、昔の仲間で、レイさんはわっちを海に連れ出してくれた恩人さね。
そんな人を売るような事はしないよ。
ただ、そこに赤髪の坊やを寄越したのはわっちさ。
モビーディックの姿がワノ国近海で目撃されたのを知った翌年、カイドウがそこを根城とした。
そこで、おでんさんはもうこの世にいなくなったって悟ったんだよ。
同時にモビーディックが目撃されたときの出来事がわっちの中で確信したのさ。
次の"雪女"が世界に出たと。」
「どうしてそのような.......」
あまりにもすべてを悟ったように、予言したかのような言う口ぶりと洞察力にただならぬものを感じた。
「わっちが"雪女"から授かった能力は自分以外の人の過去と僅かな未来を見る能力、そして時代の流れを予言する能力さ。
ユリにも、人と違う生まれながらに持っていた能力があるはず。
光の角度で少しばかり暗い翡翠の色をしているその目を見るとおそらく治癒の能力。
そして、その血は紅條の血を引いて相手の胸の内を見る力と負の意識の集合による予知の力を持っている。
癒しの能力は人を引き付け、雪女の魂は強い力を持つ者を引き寄せる。
わっちには見えるのさ。
こうして面をしているのは他者の人生の情報がずっと入ってくるのを防ぐため。
自分が見ても良いと思う相手にしか目を見やしない。」
何もかもが見透かされて、過去も共に歩いて来たかのように話すこの人は、私のどこまでを見て、どう感じてこの目を見ているんだろう。
そして初対面であるにも関わらず、まるで久しぶりに会う気の知れた親族のような空気を醸し出す彼女に、緊張の糸も緩んでいた。
「ユリ。ユリの過去は見てしまったものの誰にも話す気はありんせん。
よくぞ生きててくれました。わっちは海を出るまで遊郭に身をおきながら霜月家のくノ一でありんした。
そして、其方の母桜様とは祖母が同じである従姉妹関係にありんす。
そろそろこの魂がどう人の体に宿り始めたのか、聞いておくんなまし。」
「はい。」
正直入ってくる情報に頭が追い付かない。
けども、限られた時間で、この私自身を知る上で、その話とやらに耳を傾ける他選択肢などありはしなかった。