第4章 力を持つ者の使命と宿命
通された部屋は廊下までの雰囲気とは一変して、質素かつ空気が引き締まるような和室。
堀炬燵のように作られたテーブルにつくと、座らされ、後から侍女のような女性が来て茶を出され、それが終わると一言も口を開かず目を合わさずスッと立ち去っていった。
「わっちを軽蔑しないのかい?」
白菊はさっきまでつけていた面を外しテーブルに置いた手を見ながら少し物鬱気な声色でぽろりと吐くように言った。
「わたしがいない間で何も知らなかったことですので.......。
でも、先程お二人から感じたのは、深い愛と信頼でした。
女としてご主人と睦まじく居れるのは羨ましゅうございます。」
「そうかい。でも、親父さんや兄弟には悪いことをしんした。みんなの気持ち、特に親父さんやマルコの気持ちを踏みにじる事をすると決めたからに、便りも何も届ける事はできなかった。
カタクリとは幸せにやってても時々思い出してしまうのさ。
身勝手なもんさ。」
二人きりになって突然の告白に一瞬動揺したものの、元々敵側の人間として連れてこられて四面楚歌のところから始まったのだろう。
そこで引かれ合う人と一緒にいても、多少遠慮して本音を話すことがなかったのかもしれない。
それを、同郷で同じ種の魂をもって生まれたという共通点で、どこか安心するところがあったのかもしれない。
だとすれば聞いてあげたいとも思い暫く話を聞くことにした。
「白髭は、白菊様が幸せで、元気でいてくれたらそれで良いと思っているようでしたし、マルコも前を向いて歩いています。
彼らにあなたの事を悪く言う者はいませんでした。
白菊様に似ているこの顔も、驚く者はいましたが、悪く言うことはありません。」
「そうかい。
マルコが前を見て歩けるようになったのは、ユリがあの船に乗ったからだろうねぇ。
ユリはレイさんの所にいたんだろ?
シャボンディー諸島でよく青い炎の鳥の影を見たってちょっとした噂になってたのさ。」
父様の居場所を知ってる?
驚きのあまり思わず目を見開いて身を乗り出した。
カタクリ、ビッグマムは知ってるんだろうか?
白菊は私の表情を見て考えてたことが解ったかのようにくすりと微笑んだ。