第4章 力を持つ者の使命と宿命
ドアのところまで辿り着くと、頭上の遥か上から見下ろすカタクリを見上げた。
「お初にお目にかかります。リ....「リドル・ユリ。知らんわけがない。挨拶など要らん。
妻と故郷、魂を同じくして、尚且つ白髭の娘ならば変な動きはすまい。」
あ.......、
見聞色の覇気を鍛え抜いた末に辿り着いたと言われる"少し先の未来が見える"という彼。
戦闘中でなくても相手が敵対する海賊側の人間だとこういうものなのか。
遮るように挨拶を拒否し、鋭い視線を向けられるのは不服でもあるが、能力が発達しすぎている故にそうなのだろうと合点がいった。
「はい。そう思っていただけて光栄でございます。
本日は敵の娘にも拘らず、客人としてのお招き有り難うございます。」
最敬礼で頭を下げ顔をあげると、ピタリと威圧が収まった。
「噂に違わんな。」
「え?」
降ってきた言葉に驚いて見上げるとカタクリの表情が少し綻んでいたことに気づいた。
「後悔のないように聞くと良い。お前のためにと言い出す妻を連れてきたのは俺の意思でもある。
今回の面会はママにさえ言ってはいない。この船のクルーも同罪だ。」
聞いた話に驚いて思わず目を見開いた。
実母と言えど、わざわざ海賊頭の目を欺いてまで、部下を巻き込んでする事なんだろうかと。
「なぜそこまで......」
「わっちの先代の雪女もその前の雪女も皆そうしてきたのさ。力とリスクが大きいこの魂は扱いに気を付けんと死を呼ぶ。
雪女の魂へのせめてもの餞として受け継いだ習わしさ。
詳しくはこれから話しましょう。
さぁ、わっちの部屋へ。」
疑問がいまいち腑に落ちないまま、促されるように部屋へと押し込められた。