第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
マルコやリーザも他のナースや船医も驚いているようだが、必死にユリが言うことなす事をメモしはじめた。
俺とジョズはそろそろ邪魔しちゃいけねぇと思ってドアの方に引き下がった。
暫くして、どうやら解毒の好転作用の症状が出てきたらしく、医療用の寝着に着せ替えるらしく、担当する3人を残してカーテンで仕切られた。力がないチビッ子名医が俺たちのところに来た。
「お疲れ様!ビスタの容態はどうだ?」
「こうてんさようがでてきましたので、これよりわるくなりませぬ!
あした、あさっておやすみしたら、おはなしできまする!」
笑顔で見上げたその顔は本当に女神じゃねぇかっておもった。
全ての処置を終えたマルコはユリを抱き上げ、真っ黒で柔らかい髪を撫でた。
「よくやったよぃ。ありがとよぃ!」
小さい女神はマルコに腕を回して、嬉しそうに笑った。
その後、ユリの能力の限界を知るための実験やヨシタカからの聴取が行われた。
それらで解ったこと、
他人本人問わず科学薬品製のものは解毒されないこと
本人は自然製の毒に免疫はあるが、
毒が体内に入ったら今回のビスタのように体外に毒を排出する反応が出ること、
毒を出しきるまで寝たきりになること、
傷は目に見えるように治癒していくことが解ったらしい。
まだ、調べないといけないことがいっぱいあるが、本人も興味があるらしく実験や聴取に協力的である。
ユリの実験、聴取の責任者は自然に船医であるマルコがなっていたのは言うまでもない。
2日後、あれからユリは自分の患者であるビスタの様子をよく見に来てくれていた。
俺たちが見ているから心配要らないと言ったが、自分の力で治したから自分が見ないとダメと言い出し聞かなかった。
立派な医者じゃねぇかよぃ。
知識が豊富なだけでなく、患者に対する姿勢も礼節も脱帽の域。
姿勢、礼節は士族の生まれから来るのだろうが、知識はいくら頭がよくても3歳という年齢であそこまでは無理だ。