第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
俺はもう話について行けねぇ。肩でビスタがさっきより顔色が悪いことに気づいた。
息も荒い。
「おいしっかりしろよ!チビッ子名医が治してくれるとよ!」
聞こえていたのか、ゼェゼェ言って冷や汗を滴しながらも口もとだけがフッと笑った。
我ながら咄嗟だったがいいネーミングだと思う。
医務室につき、ビスタをベッドに横たわらせる。
ナース達は処置の準備で慌ただしくなった。
パタパタ走ってくる音がしたかと思うとバンっと勢い良くドアが開いた。
マルコとジョズが血相かいて入ってきやがった。
「ビズタは大丈夫か/よぃ!」
「うるさいじゃねぇか!ちったぁ、病人を気遣えよ。
特にマルコは医者だろう?
それに、うちのチビッ子名医が入れねぇじゃないか!」
「「チビッ子名医?!!」」
そう。チビッ子名医。荷物を取りに行ったそいつは、手に何かを握りしめて突っ立っていたが、
マルコとジョズの剣幕っぷりでビビって固まっているようだった。
ユリに気づいた二人は慌てて退いて彼女を通した。
マルコは処置の準備をはじめる。
「ここ、いりょうはん、たいちょうだけね?」
あぁ。言うと、リーザが医務室のドアを閉め施錠した。
ユリが掌を広げ、透明の液体が入った小さな小瓶をマルコに渡した。
「ちゆのなみだ。わたしのよ。きずにぬって、あとはのませてくださいまし!」
なんとなくだが、こいつは治癒の能力と一緒に医療百科事典も頭に入ってるんだと思った。
あとで確認してみるか。
「わりぃが、使い方や分量がわからねぇ。
覚えておくからやってみてくれよぃ。」
「しょうちしました。」
リーザからガーゼを受け取り、小瓶からスポイドでガーゼに垂らしそれを患部に貼り、残りはまだ意識があるビスタをマルコに起こさせ口の中に流し込んだ。
その頃には傷の方はあの淡い光を伴って、みるみる癒えていった。
「これは絶対に外に漏らしちゃならねぇよぃ。」
「あぁ。万能すぎる。知識も3歳とは思えないぜ。」
「知識?」
「あぁ。俺がビスタ運ぶときコイツ、毒の正体をあてたんだ。解毒剤があるってことも知っていたぞ。ここにはねぇようだったけどな。」
「とんでもないよぃ。 」