第4章 力を持つ者の使命と宿命
白菊の後ろで短刀を構えているエデルは警戒を解かずに彼女の動向を見張る。
「そうでしたか。失礼ですがそのお話というのはどういった用件で?
私はどうしたらいいのでしょう?」
「少しお待ち。」
目の前で整った手を翳され白菊様の後ろで武器を構えて警戒するエデルを見た。
「後ろの坊や。わっちは同郷でもあり、わっちが大事だった人たちの娘に危害を加えたりしないよ。」
振り替えると、エデルは警戒の眼差しを向けながらも、そっと武器を持つ手を下ろした。
その様子を見て僅かに笑みを浮かべると視線は私に戻された。
「そうさねぇ、じゃぁ、最初は互いの昔話から語ろうじゃないか。
こっちは"雪女"能力に関してあんたに言っておかなきゃならないことがあるのさ。
この際、解らないことはわっちに聞くといい。」
その瞳をじっと見つめると、この人に敵意は全くないということと、情が感じられた。
この人は大丈夫だと思えるほどに。
「信じてもらえたようだね。見たところ責任者は不在のよう。そこの坊やは安心して船番してるといい。
なぁに、旦那の事は心配要らない。あの人にも今回話すことを言ってありんす。
悪名に合わず律儀で武士道が解る男さ。」
カタクリと会ったときにまた顔を合わせたらいいと思い直して白菊様に付いていくことを決めた
「わかりました。」
白菊様の目を見て着いていく意思を伝えると優しく微笑み、付いてきなんしと背を向けて仮面をつけ直した。
「エデル。私は大丈夫。そう言いきれる理由はちゃんとあるし、あとでその件はお話しします。
ここを不在にすることをお許しください。」
しばらく怪訝な様子で見るも、溜め息ひとつついた。
「わかった。ここは私に任せてもらう。事情もうまいこと言っておく。」
「ありがとう。」
そして、白菊様に向き直りその後ろについて船を降りた。
エデルはずっと姿が見えなくなるまで不安な面持ちでユリの後ろ姿を見送っていた。