第4章 力を持つ者の使命と宿命
最後まで笑みを浮かべた表情を崩さずミゼルさんを置いて立ち去った。
「弟がすまなかった。私は地位は望んではいない。ここの船でいれるだけでいいと思っている。」
表に出ようとしたところに様子を伺いに行こうとしたのかエデルさんが歩いてきて私に頭を下げてきた。
慌てて気にしていないと頭をあげさせる。
「ミゼルにも何度か話してはいたんだが、こうも通じないとはな。」
「気になさらないでください。
海賊だといえばこの御時世聞くだけで嫌がる人はゴマンといるんですから。
海賊に地位を取られるならお兄様にと思われるのも無理のないことです。」
眉尻を下げる様子から申し訳ないと思っている節があるのを感じた。
この人はおそらく肩書きや身分で人を見るタイプではないのだろう。
それに兄として弟を思う気持ちも伝わってくる。
兄弟思いで優しく礼儀正しいところはどことなく兄上と被るところがあった。
「それに、身内を守ろうとか、尊敬している人ですから、悪い人だとは思いませんでした。」
目の前の人を兄上と重ねると、ミゼルさんの気持ちもやはり至極当然の事。
だから、こんなことが言えたのかもしれない。
「そう言って貰えると助かる。」
そういうと目が僅かに綻んだような表情を見せた。
「エデルさんも海賊がお嫌いで?」
「海賊だから嫌いだと一括りにしたくはない。中には気の良い者もいるだろう。
それに其方は海賊として生まれたのかもしれないが、この船に乗ったからには商人だ。私は生まれがどうだろうと身分がどうだろうと気にはしない。
それに其方が海賊とは思えない。
まぁ、そう思うのも偏見といえば偏見だが......。」
「そういうエデルさんも商人というより王族や貴族の雰囲気を感じます。」
「お互い詮索しないようにしよう。いづれ解るときも来る。その時は別に隠しもしない。」
黒い正装のような闘技服を纏う彼の姿は、背を向けて歩き出すと闇に消えるように消えていった。
ディルバリーに入社して解ったこと。
私はこれまで海賊や海軍、賞金稼ぎという名を上げる人の中でしか強い者はいないと思いこんでいた。
でも、それ以外にも彼らの中でも上位格の戦士がいる。
彼ら二人にはそんな強さを感じていた。