第4章 力を持つ者の使命と宿命
その夜は歓迎会となり、ボルさんから聞かされたのか笛の演奏をお願いされて何曲か披露した。
徐々に回りの人達がお酒が回りはじめた頃ミゼルさんに呼び出され船尾の影に連れてこられた。
壁の方に背を向けて背の高いミゼルさんを笑みを崩さずに見上げると、ダンっと壁に短刀が刺されたとわかる。
動じずに表情を変えずに彼を見やるとみるみる顔が影を射したニヒルの表情となる。
「海賊風情の女がよくも天下の商船の護衛なんかに就こうと思ったもんだな。」
こういう場合は私に、ここを辞めろとか、隊長候補の話を断れとかそういう類いだろう。
「どういう意味です?」
「どうもこうもあるものか!俺は海賊がこの地上で天竜人と同じくらい嫌いなんだよ。
そんなお前ごときが、兄さんの昇格をあっさりと横から奪い去りやがって!!」
昇格ということはエデルさんは私がボルさんと出会う前までは隊長候補だったということなんだろうか?
「ご本人から言われるのはともかく、なぜ貴方が私に仰るのです?」
「兄さんは優しいからそのようなことは言わないだけだ。本当は兄さんが隊長の座の最有力候補だったんだぞ。」
睨みを利かせながら胸ぐらを掴む勢いで迫ってくる。
それを言われてミゼルさんが日中に見せていた態度の大元だと理解した。
「ボルさんの私を見る目が間違っていると仰りたいんでしょうか?
確かに私はまだの会社の事を世間から見た分でしか知りません。
よって自ら志願するような厚顔無恥な行動はしません。
ただ、ボルさん達の元で彼らの力になりたいと思い要請を受け入れ、その期待に応えていくことでそうしたいと思ったまでです。
はじめから半年精進して期待に添えないようなら潔くこの話はお断りさせていただく所存です。」
お兄さんの事が好きで地位とかそういうものに拘るのか、推測するに、彼らはやはりどこかの王族かなんかで、生きていくためにここにいるような気がした。
「お前には無理だ。今すぐ辞退しろ。」
「決めるのは貴方じゃないでしょう。私は与えられたことをそれ以上の成果で貢献するのみ。
人を肩書きで見たり、自分の肩書きで人を見下す輩が
嫌いでございます。」
悔しそうに爪を噛みながら歯軋りする。
「もう用がないようですね。失礼いたします。」