第3章 覚醒をはじめた証
そして船出の朝。
みんなより早く起きるユリはいつものように笛を吹こうと甲板に出る。
「いつもこのくらい早いんだな。」
いつもそこにいない大きな存在に気づく。
「父さん!!肌寒いですよ?こんな早くに......。」
「いつも息子たちに取られてんだぁ。
こうでもしねぇとオメェとの時間すらとれねぇだろうが。」
忘れてた訳じゃない。いつも兄達に囲まれて、しかも今回はディルバリーにも顔を出さないといけなかった。
結局は後回しになったと後悔してばかりだった。
一番の恩人は父さんなのに。
「ごめんなさい。でも、ありがとう。」
父さんは優しい目付きで私の胸元にあるペンダントを見た。
「父親としては誇らしいなァ。
そんなモン作って貰えるほどオメェは愛されてんだ。
いい娘に育ったもんだ。」
父さんから認めて貰えることが嬉しい。
私が育ったのは父さんが築き上げてきたこの海賊団と、ロジャーの右腕として戦ってきた海の男。
そして兄妹。
「元はといえばレイリーも父さんも、
おでん様でもその子息でもない私たちをここまで慈悲深く育てて下さったからです。
感謝してもしきれません。」
「何だか嫁ぐ前みてぇな言い種だなァ。グラララ.....。
ユリ。勘違いすんじゃねぇぞ。
俺ァ、確かにおでんの頼みで3人を引き受けたが、お前達自身が気に入って俺の子にした。
ここはヨシタカ、ユリ、ユキ3人の家だ。
いつでも帰ってこい。」
「父さんこそ嫁に出す父親みたいじゃないですか.....。」
涙腺が熱くなって涙が溢れた。
「あぁ。男連れて来る時ャァ、ここの野郎は泣くに泣くだろうが、ユリが選らんだなら何処のハナッタレだろうがいい男だろうよ。
オメェの周りにいる奴等なら誰でもいいと思ってるからな。
義久も言ってた通り自由にユリらしく生きろ。」
「まだ恋人はいいです。此処に帰る度にまた強くなって帰ってきます。」
そういうと父さんは静かに笑った。
「娘の成長ほど親にとっての幸せはねェ。」
と。