第3章 覚醒をはじめた証
「俺も、ユリが"雪女"を宿してるって知ったときに思い出したよい。
それまで意味がちゃんと解ってなかったからな。
今思えば、その治癒の能力も"雪女"がもたらしたモノだと言われれば納得がいくよい。
アイツは先読みと人の過去を見る事に特化した能力だったらしいからな。
妖怪の魂を持った人間が生まれる時、何か超能力的なもんを持って生まれるって言ってたからねぃ」
急にそう告げられてハイそうですかとは言わないだろうが、あとは、本当にアイツが出てくりゃ全部教えてくれるだろう。
俺がユリに出会ってから、コイツを守るための研究をしてきたし、研修に行くまでの特異体質を持つ体のデータは俺が持っている。
「ユリにもしもの事があったときの研究データはある。
あとは白菊に会えたなら、俺が知っとくべき情報を教えてくれよい。
お前になんかあったとしても、万全の状態で決戦に送ってやる義務がこっちにはあるよい。
勿論俺たちも行く前提だがねぃ。」
いざ、ユリに何かあった時のためにそれを教えてきたが、抗毒検査と新たに出た"雪女"の能力を覚醒した状態での持久力と体調の変化を報告してもらえれば、こっちが治療することもできる。
あとは白菊ともし本当に出会って、ユリの状態を見て貰えればこっちの対処がしやすくなるって事だ。
「わかった。ありがとう。連絡する。」
白菊の事に対してあんまりユリからは聞いてこない。
それは俺への配慮もあるのかと少し思えただけで嬉しかった。
まぁ、今じゃもう過去の話となりつつもある。
もう、四十前。
男の欲なんざ衰えていくもんだと思ったがよりによって親子ほど離れたユリが可愛くてしょうがねぇ。
そんな自分を客観的に考えただけで鳥肌が立つ。
「あ、この間のペンダントできたよい。
着物じゃ映えんかもしれんが、着けてやっていいかぃ?」
「え、....あ、はい。」
何を思い出したのか知らねぇが顔を染めて目だけを反らした。
何のお構いもなしに着けてやると、うなじに触れたとたんピクッと肩が揺れた。
整えられた艶っぽいうなじから、また上品で優しい匂いを感じて煽られてる気分に陥るのを必死に堪えた。