第3章 覚醒をはじめた証
そこそこ安定して座れるようなところを見つけて、ユリを座らせ、その斜め前に腰かけた。
細い指に止まった火垂るを眺めている眼差しはまだ幼さが残る。
「そんなに嬉しいかい?」
「うん。こんなに自然の中にいる気分は久しぶりで.....。」
「なんだろうな。初めてワノ国に行ったときから思っていたが、和服ってんのは、自然に馴染むもんだねぃ。
こっちで日頃着ている服じゃ、馴染まず喧嘩してるようだぃ。」
「そう?考えもしなかった。
でも、昔から支配なんて思想はなくて共存繁栄の精神だったから、あながち間違っていないのかも。
.......今は
..............違うけどね。」
変わってしまったであろう故郷を思ってか、ユリの表情が少し曇った。
おでんさんを騙し討ちしてカイドウを味方につけた天下を取ったらしい黒炭オロチ。
あれからは直接ワノ国に行ったことはねぇが、風の噂ではあの豊かな森も無機質なモノに変わったらしい。
「イゾウが言ってた事件の日から14年か.....。
6年なんざあっという間だよい。
そんな顔すんじゃねぇよい。
取り返すんだろ?」
「うん。取り返すよ。ごめん。
話してたらその事が過っただけ。」
そう言いながら、俺に心配させねぇように笑った。
「気持ちは解るよい。
まだまだユリは強くなる。
白菊がそうたたねぇ内にお前の前に現れるよい。
鍛えてもらうといい。」
「え?どうして.....。」
都合よく話があの国での決戦の話になった。
確信がねぇから言わないでおこうと思ったが、白菊が彼奴らにかっ拐われる前に本人から聞いた予言的なものが、こういうことだったんだと思ったから、コイツのために言おうと思ったんだ。
「アイツはユリより強力に過去も未来も見える人間で、会わなくなる少し前、お前が此処に来ることを解ってたんだよい。
今になって思ったことだがな。
ここに自分のような子が現れる。その子に会いに行くまでが自分の役目だってな。」
「そうだったんだ....。」
ユリは自分が此処に来る予言をしてたという現実味のない話に少し動揺しているようだった。