第3章 覚醒をはじめた証
そして、だいたい2時間経ったところで明日が早いからと言う理由でディルバリー社員とユリは部屋へと戻っていった。
「んじゃ、俺も書類片付けに行くよい。」
そう言って誤魔化してユリの後を追うことにした。
「お、そうか!ご苦労さん!明日は寝過ごすなよ!」
サッチが少し酔った顔で笑って手を振った。
「寝過ごすかよい。おまえこそ気いつけろい!」
と返す。
へへっと笑いながら大丈夫だと言った。
他のやつらにも手を振られるなか、親父が無言で俺が去るのを見送っていた。
ユリが待っているはずの船尾に向かうと、花魁の格好の後ろ姿を見つけた。
後ろ姿だけ見れば白菊と全く同じで息を飲んだ。
「ユリ。」
振り向けば柔らかい表情で笑みを浮かべるのは紛れもなくユリ。
「行くか?」
俺はちゃんと笑えてるだろうか。
脳裏で白菊とユリが交互に支配する。
明日からユリはいない。
ズボンのポケットに入ったペンダントが入った箱を握りしめた。
「重たいけどいいの?」
「お前は軽すぎるから着物着たくらいでどうってこたぁねぇよい。」
そう言って、腕から先を青い炎の翼に変えて後ろに掴まるように促した。
「じゃぁ、お願い。」
後ろから抱きつかれるように首に手を回された。
背後全体にユリの体温を感じると不本意に胸が高鳴る。
「行くよい。」
ふわりと飛んでも、あの相棒に乗り慣れたからか声はあげなかった。
けど、
「マルコの青はずっと綺麗だね........。
子供の頃から変わらない。でも、なんか、
燃え方が優しくなったね。」
ユリの思いに更けた優しい声が
俺の胸を締め付けた。
「そうかい?大事なお姫さんは優しく運ばないとねぃ。」
「イゾウみたいに言わないの!」
そう言ってむくれるところが可愛い。
俺たちはハンドアイランド島の奥地にある川を目指して飛んだ。