第3章 覚醒をはじめた証
演舞の後は飲めや食えやのどんちゃん騒ぎ。
ユリは白髭や隊長、ディル社員と酌を交わしながら送別会という名の宴を楽しんでいた。
当然というべきか、過保護な隊長達はユリを囲むように座り、ボルさんエリさんもその輪の中にいるという状況。
「しかし、ユリちゃんは多芸だね!宴会部長もいけるんじゃないか?」
「いやいや、イゾウが企画してるのにしたがってるだけよ?
教えるのも上手で、16番隊に楽器隊がいるのも初めて知ったんだから。」
ほろ酔いで頬を薄く染めながらニコニコと楽しそうなボルさん。
ネーミング的にオッサンな感じがして嫌だ。せめてイベント企画部長にして欲しい。
しかも企画して、完璧にやってしまうのがイゾウ。
これまでは、傘下や新しい仲間が増える度に親子盃、隊長任命、隊長の懸賞金昇額祝いなど、宴の殆どの企画や幹事をやってきた。
「ありがとよ。姫も覚えが良いじゃないか。祝い事の時に毎回来てくれると嬉しいんだが......。
そうもいかなくなっちまったな。」
「そうだな。ユリがいる宴は小せえ餓鬼の頃から華があったな。
たまには遊びに帰ってこい。みんなが喜ぶ。」
父さんがいうと、ここが本当の家で父親がそう言っているように思えてしまうから不思議だ。
父様とはまた違った感覚で、底無しの穏やかな大海のように思った。
「ありがとう。父さんに言われたら休みが出来たらすぐ行きそう!!」
「グララララ、嬉しいこと言うじゃねぇか!そんなので来てくれるんなら何度でも言うぞ?」
ぐいっと酒を飲み干した父さんの杯にまた酌をする。
「じゃぁ、父さんもいつも元気でいてね?薬酒は毎回持ってくるから。」
「ありゃ、美味かった!無理はするなよ?」
「勿論。なんだか顔色もいいからよかった!」
そう言って笑いかけると父さんも優しく笑った。