第3章 覚醒をはじめた証
皆の輪の中にくると立ち止まり、腰を落とし会釈をする。
曲が変わり、舞曲が流れるとユリは聞いてない!とイゾウを睨むが、アドリブで舞えと言われた。
曲自体はイゾウ自身が作った物で知っていたので、歌詞のイメージを膨らませ、頭をフル回転させて舞い踊る。
時々目が合えば、上的じゃないかと口角を上げて見せるイゾウ。
そういう彼も共に舞うと酒の場が一気に盛り上がる。
うっとりして目を輝かせる者、二人の芸を見て上機嫌に酒を煽る者、二人に合わせて踊る者、いろんな兄弟が二人の芸で一つになっていた。
イゾウはユリに対しては女として好意は持っていないものの、女として、侍としてユリの魅力を最大限に引き出せるのは自分より右に出るものはいないと自負している。
そのイゾウによって未知の領域に踏み込んで自分の可能性を見せてくれる事にユリ自身も感謝していた。
そしてその二人の関係性を美しいと思う白髭海賊団、ディルバリーの社員達は、二人が織り成す世界観にどっぷりと浸っていく。
海賊大名
流桜 覇せし武士の
夢見し大海 主の心が如し
荒れ狂う海の孤島
狭し狭しと 自由を求め
海賊の二王と渡りて
見た世界に
次世に繋ぐ夢はまた
"自由と愛に溢れる世界"
酌み交わす盃 高らかと
王と酌み交わす約束の果て
今主の意思継ぎし武士共の
闘志は二十年(ハタトセ)渡りて
業火の如く燃え盛る
意味のわかる古株の兄弟達はおでんとおでんと共に航海した侍を思い浮かべて目頭を熱くした。