第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
「......わかった。」
「...了解いたしました。」
大人たちは全員理解したであろう。
あとはヨシタカはともかく、問題はユリとユキである。
幼いゆえどこまで理解しているのか....。」
「ユリ要するに、誰かの傷や病気を治したきゃ、ここにいる者にやって良いか聞けってことだ。
お前のことを守るためだユリ。
世の中には悪い奴が多い。お前を悪く扱うものもいるからな。わかったか?」
「とうさん、わかりました。ユリまもりまする!」
ほんとうにわかったかは定かではないものの、親父にそう言った顔は、おちゃらけた様子はなかった。
「この能力を医療班が研究してほしい。コイツを守るためのだ。」
「御意!!」
初めて里を出た少年は、世界の残酷さを感じずにはいられなかった。
隣にいる自分より小さな手を壊れるほど握りしめた。
「しかし、凄いじゃねぇか!俺は感動したぜ!あんな綺麗なもん初めて見たぞ!」
一瞬間が空いて皆が笑顔になって拍手をはじめた。
はりつめた空気を変えたのはサッチ。気づかなかったがユリは空気の重さに、ことの重大さを感じていたのか不安そうな顔をしていたのだ。
そんなよく見ている仲間としての兄の一人をそこに居るものが"でかした!"と思わずにはいられなかった。
以上だと白髭が言い出そうとした瞬間、
「敵襲だぁァァァァあ」
警鐘が鳴り響く。
「話は終わりだ!行けぇぇ野郎共ぉぉ!」
「おぉぉぉぉう!」
隊長達は好戦的に笑って、船長室を後にし、兄妹は安全だからと船長室に留まった。
船の上で戦闘をする様子はなく海を隔てた向こう側で、人の叫び声や刀を交える音、銃声がなる。
大丈夫だから安心しなという白髭の膝の上に抱き上げられた。
こちら側が優勢なのだろう。本船は隊長達の戦いを見守る声が聞こえた。
ふと、ユリが白髭の顔を見て服を引っ張りだした 。
同様にヨシタカ、ユキも様子がおかしい。
「おい、どうした?」
「ビスタ、毒かなんかで動かなくなるかもしれぬ。」
「おめぇらも同じか?」
ユキとユリは真剣な眼差しを向けてコクンと頷いた。
「安心しろ。出てくる。」