第3章 覚醒をはじめた証
残されたビスタとハルタが戻ってきたのはそれから暫くしての事。
二人は慌てて医療班にユリの居場所を聞いては医務室に駆け込んだ。
その時、大きな保温機の中に眠るようにして横たわる彼女の前にマルコが座っていた。
「さっきはすまなかったよい。
ビスタもハルタにも何も言ってなかったのにな。」
さっきとはうって変わって、少し申し訳なさそうな笑みを浮かべながら二人に謝った。
「いや、こっちがもっと早く気づけば良かった。少し無理をさせ過ぎたようだ。」
「マルコに相談すれば良かったね。ごめんね。
で、ユリちゃんは大丈夫なの?」
「あぁ。こいつは回復が早いから明日の朝はいつも通り目覚めるよい。
さっき帰ってくるときも少しだけ目を覚ましたよい。
コイツもいつもの加減でやったんだろうねぃ...。
早く言えば良かったよい。」
心配そうな面持ちでユリの顔を見るマルコの表情を見て、ビスタはかつて白菊がいた時のマルコの表情と重ねた。
「お前がまたそんな顔をするとはな.....。」
「なんだよい。」
「なんでもない。ユリは成長した。力も心もな。
さすが、おでんさんが選んだ家臣の子だ。」
「あぁ。小さい頃からとんでもなかったよい。」
マルコとビスタは、ユリが初めてモビーに乗船したときの事を思い出して目を細めた。
「へぇ。凄いね。隊長たちも認めるなんてね。
でも、俺もこの子はもっと化けると思うよ。
なんせ、俺たちの妹だ。」
「違いねぇ。」
保温機で眠るユリを優しい眼差しでみる3人は、その、緩んだ寝顔を見ながらこれから先の彼女の将来を思い浮かべていた。