第3章 覚醒をはじめた証
数分前のモビー
俺は徹夜で書類整理をやっていたが、昼前に睡魔に負けて仮眠をとって部屋を出た。ちょうど昼寝が終わるような時間に目が覚めて、腹が減ったから食堂へと向かった。
その時に部下から声をかけられた。
「あれ?隊長も一緒に行ったんじゃないのかい?」
「は?何のことだよい。」
「え?マジで聞いてないのか?
今日ユリさん、ビスタ隊長とハルタ隊長と手合わせするって近くの無人島に行ったって話だ。
暗くなる前には帰るってビスタ隊長が「それ、いつの話だ!!」
最後まで話を聞く前に、思わず胸ぐら掴んで詰め寄ってしまった。
おどおどしている部下に気づいてすまねぇと離してやると
「あ、あの、ほ、他の奴等から聞いたんだが、あ、朝、朝食をとる時間より前に出て行ったって話で......。」
「あぁ。わかった。医療班の奴等にユリの保温機出せって言っといてくれ!
今から迎えに行く!」
「へっ、へい!」
しどろもどろになりながらも話してくれた部下が医療班の連中の部屋へ走っていくのを見届ける。
その後俺は不死鳥の姿になって飛び立った。
しまった。
確実に俺のミスだ。
覚醒期にあたるユリは、最大限の力を長時間出し続けるとそれこそ急性冷体温症に陥る。
ここには寄るだけだとどっかで決めつけて、手合わせをするなんて考えてもみなかった。
でも、考えてみればユリの性格からして至極当然の事。
これからは俺たちの船や、赤髪の船にも乗らず、ユリが筆頭になって最前線で戦うということは知っていたのに。
徹夜で頭がバカになったのか、いや、それ以前にアイツが帰ってくることに糠喜びしてたのか、
思い返すだけで自分に腹が立った。
ビスタもハルタも100%善意でユリの相手になっているし、異変に気づいたらすぐに止めてくれるかも知れねぇ。
だけど、気づかれる表情や現象が出て来た時点で、間に合うのかわかんねぇ。
俺が知ってるのは、白菊の覚醒期に直接見たものではなくて、事後に聞いた話だったから。
そして、ユリ自身が強くなることを一番に求めているからこそ、少々辛くとも見せようとせず痩せ我慢する性格を一番知っているのはこの船では俺だからだ。