第3章 覚醒をはじめた証
戦い始めたときは日が登ってきた頃だったのが、今では日が傾き始める頃。
3者全力で剣を交えてからもかなりの時間が立つ。
そんな中、ハルタもビスタもユリの微妙な変化を感じていた。
感情を持ったユリらしい表情と、人間とも思えない冷酷な表情と入れ替わるのに合わせて、冷酷な表情の時に攻撃の威力が高まり、二人が圧倒されて劣性に傾く場面がある。
しかも、時間が経つにつれて冷酷な表情でいる割合が高くなっている。
そして本来のユリらしい表情の時に僅かに何かを堪えているのを感じた。
ビスタはふとユリが"雪女"の力が覚醒してきている過程にあると聞いたのを思い出した。
ビスタも古株ではあるが、同じ能力を持つ白菊が"雪女"の能力に覚醒した頃の話は本人からもマルコからも聞いたことがなかった。
そして、これは結構危険な状態ではないかとビスタ自身の勘が訴える。
「ユリ、大丈夫か?無理はするな。危険な感じがする。」
「やっぱり?俺も思ったよ。もう辞めとこう?ユリちゃんが心配だよ...。」
「え?でも私.....。」
二人から言われて立ち止まると急速に体が冷える感覚が走った。
「あぁ、ごめんなさい。もう手遅れかも.....。」
「は?」
「お、おい!!」
異変に気づき二人が駆け寄るも
ユリは目の前で意識を失い、膝から崩れ落ちるように倒れこんだ。
地面に体がつくその刹那、
「ユリ!!」
声がした方を向くと青いものが高速で滑空してこちらに向かってきた。
表情の読めない不死鳥の姿のマルコが降り立ち、地面スレスレのところで抱きあげた。
「てめぇら、二人もいながら何してんだよい!!」
頭部と胴体だけ人に戻った状態で二人を怒鳴り付ける顔は、ビスタもハルタも見たことがないくらい焦りと怒りが混じったような顔だった。